自動車メーカーに必要とされるハイブリッドカンパニーへ
柿原 安博 氏
豊通エレクトロニクス 代表取締役専務
| 豊通エレクトロニクスは、2003年4月に豊田通商の100%子会社として設立されたカーエレクトロニクス専業商社である。主力製品である、米Freescale Semiconductor社、ドイツInfineon Technologies社、米Texas Instruments社など海外メーカーの半導体製品を、デンソーやアイシン精機などトヨタグループのTier1サプライヤに納入するのが事業の中心だが、国内自動車メーカーを中心に自動車用ソフトウエアの開発・標準化を推進する団体「JasPar」の事務局や、2008年3月に解説した品質サポートセンター「TAQS」をはじめ、半導体商社の枠に留まらない活動も行っている。これらの活動の狙いや、今後の事業方針について、代表取締役専務の柿原安博氏に聞いた。 | ![]() |
トヨタグループの商社である豊田通商では、以前から自動車用を中心に半導体を取り扱っていた。しかし、単純に商品を右から左に流すという旧来の商社的な手法では顧客対応できなくなってきたこともあり、2003年にカーエレクトロニクスを前面に打ち出して半導体事業を分社化することになった。
分社化の最大の狙いは、これからの半導体商社に必要だと考えていた半導体技術者をはじめ専門知識を持った人材の確保にあった。豊田通商の事業部のままでは、商社マンを集められても技術者を集めることは難しかっただろう。2003年当時は現在ほどカーエレクトロニクスが注目されていなかったが、何とか立ち上げることができた。
設立当初は、従業員16人、売上高70億円程度だったが、現在は113人の人員で、売上高271億円にまで成長することができた。また、長い期間をかけて製品開発が行われる自動車業界では、2011年〜2012年の新車に採用される半導体デバイスは現時点でほぼ決定していることもあり、2012年には売上高500億円〜600億円にまで伸ばせると期待している。
ファブレス機能も立ち上げ
豊通エレクトロニクスは、海外メーカーの半導体製品の代理販売だけでなく、ECUソフトウエア開発ツールの販売や、ECUソフトウエアそのものの受託開発、テレマティクス関連のコンテンツ販売なども手がけている。目指すのは、ハードウエア、ソフトウエアの両面で顧客に必要とされる“カーエレクトロニクスをリードするハイブリッドカンパニー”だ。
半導体製品の顧客はほぼトヨタグループに限られるが、ソフトウエア関連についてはすべての自動車メーカー、Tier1サプライヤが顧客になりうる事業だ。実際に、タイに従業員150人のソフトウエア受託開発の子会社を設立するなど体制強化に注力しており、コンテンツでは、デンソーの技術を応用展開した中国国内向けカーナビ用地図でシェア70%を獲得するなどの実績も出ている。2012年の売上げ予想のうち、100億円程度がソフトウエア関連になるだろう。
半導体販売でも、独自に設計したファブレス製品の展開を始めた。現在はEEPROMだけだが、今後もセンサー関連やARMコアのシステムLSIなど、半導体メーカーが手がけないが顧客を囲い込める製品を開発していく。
信用力の源泉
これらのハードウエアやソフトウエア以外の事業となるのが、FlexRayやAUTOSARなどの車載ソフトウエアの標準化活動を行っている「JasPar」や、認証期間の「VeLIO」、そしてこのほど設立した「TAQS」だ。
JasParは、「国内エレクトロニクス業界でよく見られるコンソーシアム活動を自動車業界でも実現できないか」という国内自動車メーカーの電子技術トップからの依頼に応えて、体制整備などでお手伝いさせていただいた。2004年の設立以降、JasPar仕様のFlexRay規格の策定が進むなどの実績も出ている。VeLIOは、CANやFlexRayなど車載LANの規格認証を行う組織で、2007年9月の発表から準備は着々と進んでいる。TAQSは、数年前から設立案を暖めていたが、センター長をはじめ優秀な人材を確保できたことでなんとか開設できた。
これらの事業は、直接に収益を得るためというよりも、自動車メーカーやTier1サプライヤ、ひいてはカーエレクトロニクス業界全体への信用力になると考えて取り組んでいる。インテグレーターではなく、顧客が困ったときに役立つ、アグリゲーター、イネイブラーとして認知されるように活動を広げて行きたい。
(聞き手:朴 尚洙)


