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TOP INTERVIEW

横断プロジェクトで
Tier1サプライヤとしての地位を強化

森安 俊紀 氏
東芝 執行役上席常務 自動車システム事業統括

国内大手電機メーカーの中で、発電機、FA、産業機器などの重電を手がける東芝、日立製作所、三菱電機の3社は扱う技術の幅も広く、企業としてのポジションは他の大手電機メーカーと少し異なる。自動車業界向けに専任の事業部を設置してTier1サプライヤとして認知される日立、三菱電機に対して、東芝も自動車システム事業確立に向けた本格的な取り組みを始めた。同事業を統括する森安俊紀氏に今後の戦略を聞いた。 森安 俊紀 氏
モリヤス・トシノリ 1974年、慶応義塾大学工学部電気学科修士課程を修了後、東芝入社。1997年半導体事業本部マイクロプロセッサ・ASIC技師長に就任。1999年設立のセミコンダクター社ではシステムLSI事業部マイクロプロセッサ統括部長に就任し、2001年からはシステムLSI統括第三部長を兼任。2003年セミコンダクター社副社長兼システムLSI事業部長とともに執行役常務となり、2005年セミコンダクター社営業統括責任者に。2006年から現職。

 1978年、8ビットマイコンが全盛だった時期に、ガソリンエンジンの燃料噴射装置用に12ビットマイコンを開発し、米Ford Motor社に納入したのが、東芝とカーエレクトロニクスの初めての接点になる。以降、国内外の自動車メーカーに半導体製品を納入するようになった。以前から、オルタネータダイオードなどの供給はしていたが、ここから自動車を強く意識するようになった。しかし、この時点での東芝における自動車向けの事業展開は半導体事業の中にとどまっており、メカトロニクスを手がけるなどして拡大して行くということはなかった。
  東芝での、自動車向けシステムの事業体制を構築する取り組みは、作っては壊し、作っては壊しの連続だった。たとえば、1990年代にカーナビを開発して市場参入したが最終的には撤退している。

カンパニー横断の技術開発へ
  その一方で、自動車に関連する事業が社内に多数あることもまた事実だ。1960年代から手がけている、高速道路の交通管制や料金収受などの交通制御システムは事業として確立しており、現在も社会システム社でETCシステムなどを展開している。セミコンダクター社で扱う半導体は、世界トップクラスのシェアを持つ製品も多く、堅調に売上げを伸ばしている。ほかにも、10年以上前から開発しているハイブリッドシステムは、当初の商用車向け以外に乗用車向けでも高い評価を得るなど、高い技術を持っている。
  社内にこれだけのリソースを抱えながら、その一方で自動車向けの事業展開は明確になっていなかった。そこで2003年に、自動車システム事業統括部を立ち上げ、まず営業窓口を一本化したが、技術開発については手付かずのままだった。このままでは、急速に進展するカーエレクトロニクス技術をとらえた製品開発が難しくなるという西田厚聰社長の判断のもと、2006年から一定規模の予算とともに、各カンパニーの技術リソースを横断的に活用できる権限を持たせたることになった。

最初の2年間が重要
  実際に社内横断型の開発プロジェクトを始めたのは2007年度からになる。実行していく上では、各カンパニー間で連携を深めるなどといったお題目な施策ではなく、プロジェクトに明確な予算をつけて、開発する製品の顧客を探してくるという、事業化への強い意志が重要になる。各カンパニーには自身の開発計画があり、もしかしたら横断プロジェクトの開発課題はその中に入っていないかもしれない。そこで、予算もつけない、顧客もいないとなれば、積極的な開発ができるはずがない。
  たとえば液晶パネルの場合、−40℃でも表示の応答速度を維持する開発は、他のアプリケーションからの需要がないので優先度は低い。しかし、自動車用という意味では必須といっていい開発課題になる。
  自動車という製品の開発サイクルが長いことにも対応して行かなければならない。東芝は、3年ごとの中期計画で経営を行っているが、自動車は現在開発している技術でさえ量産適用されるのは早くても5年後。つまり中期計画に組み込まれる前の最初の2年間に、各カンパニーでの技術開発を促進するためには、自動車システム事業統括部の役割が非常に重要になってくる。
  現在自動車システム事業の売上高は約2000億円。中核となるのは、半導体や液晶パネルなど部品事業であり、Tier1サプライヤに納入することになる。もちろん部品事業も伸ばしていくが、横断プロジェクトでは、東芝の先端技術をシステム化して自動車メーカーに直接納入するTier1サプライヤとしての事業の強化が目的になる。

ハイブリッド、安全、インフラ
  現在進めている開発案件は、ハイブリッドシステム、各種センサーを応用した予防安全技術、インフラ協調などが柱となっている。
  ハイブリッドシステムは、自動車の環境対応技術として市場拡大が確実に期待できる分野だ。すでに日野自動車をはじめ商用車向けに高い実績があるが、最近ではTier1サプライヤを通してだが、米国自動車メーカーに乗用車向けシステムを出荷するようになった。モーターやインバータだけでなく、制御システムについてもノウハウを提供している。さらに、高容量かつ急速充放電を安全に行えるバッテリーの開発も進めており、将来的にはハイブリッドシステムをワンストップソリューションで提供できるようになるだろう。
  予防安全技術では、すでに夜間の歩行者を識別するECUを納入するなどしているが、次世代、次々世代向けではさらに高レベルな画像認識技術が必要になる。人の認識であれば、5m先の人を数十cm精度で認識できなければならない。ハードウエアであるCMOSカメラや画像認識プロセッサとともに、対応するソフトウエア開発も進めていく。
  インフラ協調の分野では、路車間、車車間などの通信技術をどのように利用するかが課題になるが、通信フォーマットについてはWiMAXやDSRCなど複数が共存することになるだろう。この複数フォーマットに対応するマルチ高速無線通信モジュールを開発すれば大きな差別化技術になる。社会システム社で扱う交通制御システムと連携した取り組みも必要だ。

CELLの技術を自動車に
  将来の情報通信は、個人、家庭、自動車など居場所に限られず、ボーダーレスになっていく。そして情報処理を行うのに最適なCELLプロセッサの技術は、自動車というアプリケーションにも活用できる。実際に、メディア・ストリーミング・プロセッサ「SpursEngine」のように、必要性能に対して、コア数、駆動周波数、消費電力のバランスをとった開発事例も出てきている。CELLアプリケーションがゲーム機だけにとどまらない以上、自動車用途も今後の開発課題としたい。

(聞き手:朴 尚洙)

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