パワートレインと車載情報機器に
マルチコア技術を導入
三木 務 氏
ルネサス テクノロジ マイコン統括本部 自動車事業部 事業部長
| 日立製作所の「SH」、三菱電機の「M16C/M32R」をはじめ前身2社の製品ラインアップを統合し、マイコンで世界トップシェアを走るルネサス テクノロジ。自動車用でも、このマイコンに加えてアナログIC、パワー半導体などを展開し、国内市場で大きな存在感を発揮している。自動車事業部長を務める三木務氏に、課題である海外展開や、将来の自動車に必要となる半導体技術などについて聞いた。 |
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| ミキ・ツトム 1978年、大阪大学基礎工学部卒業後、三菱電機入社。1998年半導体第二事業部第一営業部長に就任。2003年のルネサス テクノロジ発足時には、ルネサス販売第三営業本部副本部長として承継転籍し、2004年からシステムソリューション統括本部自動車事業部の副事業部長に就任。2006年から現職。自動車事業部は2007年4月に、システムソリューション統括本部からマイコン統括本部に異動した。 |
ルネサスの自動車事業というとマイコンのイメージが非常に強い。実際に、国内カーナビ市場でのシェア80%を筆頭に、ダッシュボード、エアバッグ、パワートレイン、電動パワーステアリングなど各アプリケーションにおいて国内トップシェアとなっている。
さらに、マイコンだけではなくアナログIC、パワー半導体でも積極的に製品展開しており、自動車に必要な半導体製品を幅広く取り扱っていることも大きな特徴だ。半導体事業を行う上で「選択と集中」は重要だが、あえて絞り込みを行わないフルラインアップ体制を取ることで、顧客の求めるモジュール化、システム化要求に応えやすいようにしている。
プリファードサプライヤへ
優位に展開できている国内市場と比べて、海外事業の強化は大きな課題となっている。国内市場ではトップでも、グローバルの自動車用半導体市場では海外大手3社に次ぐ第4位であり、伸ばす余地は大きい。
製造拠点を含めてグローバル化を進める国内自動車メーカーに合わせて、国内の主要Tier1サプライヤは海外での製造力強化に本格的に取り組んでおり、その拠点展開と同時に海外自動車メーカーからの受注拡大も進めている。当社がこの国内自動車メーカー/Tierlサプライヤの動きに同期して海外展開を強化すれば、海外シェアを高めることにつなげられるはずだ。
自動車のサプライチェーンにおいて、半導体メーカーの直接の顧客はTier1サプライヤである。しかし欧州などでは、最上流にあたる自動車メーカー自身が「プリファードサプライヤ」として半導体メーカーを指定することも多い。この認定取得のために、欧州のFlexRayコンソーシアムやAUTOSAR、国内のJasParなど標準化活動に積極的に参加して、標準規格を製品にいち早く取り込めるようにしている。
また、自動車メーカーやTier1サプライヤが開発に使用しているソフトウエア・ツールの環境上で、ルネサスのマイコンモデルを標準的に利用できるようにすることも必要だろう。たとえば、米VaST Systems Technology社と提携することで、ECUのシミュレーション環境においてSHやR32Cのモデルが標準で動作するようにした。
ソフトウエアという意味では、欧州で策定しているソフトウエア標準規格「AUTOSAR」については半導体メーカーがローレベルドライバを提供する必要がある。2007年末までにAUTOSARのリリース3.0の内容が発表されるが、これに合わせて3.0対応のローレベルドライバを2008年3月までに発表する予定だ。
マイコン開発を加速
次世代に向けたマイコン開発では、パワートレインと車載情報機器用にマルチコア技術を導入する必要が出てきている。
パワートレインでは、エンジン、トランスミッションともさらに高い処理能力が求められるようになっている。当社では現在、90nmプロセスによる、SH2Aコア、駆動周波数200MHz、4Mバイトフラッシュメモリ内蔵のマイコン製品をサンプル提供しているが、耐熱性、消費電力などを考えるとシングルコアでは300MHzが限界だろう。それ以上の高性能化要求には、SH2Aのデュアルコアで対応する。またメカとECUを一体化する「機電一体」もパワートレインの技術開発テーマであり、放熱性能、コンパクト化を進めるためにウエハープロセスパッケージの採用も積極的に進めたい。
車載情報機器では、すでにカーオーディオ用にSH2Aデュアルコア製品の量産を開始しており、さらに2008年中にはカーナビ用にSH4Aのマルチコアプラットフォームを投入する。2007年のCEATEC展などでクアッドコアのデモンストレーションを行ったが、製品化についてはデュアルコアからになるだろう。
ブレーキやステアリングなどのシャシー系のマイコンでは、安全な動作を保証する機能安全規格への対応が必要になっており、ECCメモリを搭載するなどした「SH-Chassis」として開発を進めている。また、アダプティブ・クルーズ・コントロールなどの予防安全システム用では、ミリ波レーダーの信号処理や画像認識など従来の制御と異なる特有の機能を盛り込んだ「SH-ACC」を提案している。
マイコンに内蔵するメモリでは、90nmプロセス製品で高速アクセスが可能な「F-MONOS」構造のフラッシュメモリを採用しているが、次世代不揮発メモリ技術として、書き換え速度と寿命を大幅に高められるMRAM(磁気抵抗メモリ)の開発も行っている。
ネットワーク関連では、シャシー系向けに、次世代車載ネットワーク規格であるFlexRayに対応したマイコンとバスドライバをチップセットで提案する。また今後はCAN、LIN、Flex Ray、情報系のMOSTなど複数のネットワークが自動車の中で混在することになり、相互に情報をやりとりする必要も出てくると考えている。そこで、各ネットワークをルーティングする機能を持ったゲートウェイマイコンを開発中である。
アナログICについては、SOI(silicon on insulator)を使った0.25μm BiCDMOSプロセスでの量産を開始しており、さらなる小型化、高性能化を実現した。さらに現在開発中の0.15μmプロセスを実現できれば、エアバッグ用途などではマイコンとアナログICを1チップ化した製品も可能になるだろう。
今後の自動車開発が、複数のECUをコンパクトにまとめて、燃費改善のための軽量化を志向するのであれば、半導体の高集積化により貢献できる場面はさらに増えてくるはずだ。高集積化開発において、デジタル処理だけを考えるのであれば社内外のIPを組み合わせたデバイスでも十分対応できるかもしれない。しかしアナログIC、パワー半導体についてはプロセス依存の部分が大きく、当社の幅広い製品ラインアップがさらに重要な意味を持つことになるだろう。
(聞き手:朴 尚洙) |